製法 | 種類 | 主産地 | 主原料 | 造り方・特徴 | 酒税法上の表示 | |||
醸
造 酒 |
果物や穀類を酵母菌の働きによって発酵させて造る酒 | ワイン | 欧米など 世界各地 |
ぶどう | 皮や種まで一緒に発酵させたものが、「赤ワイン」。 |
果実酒 | ||
ビール | 世界各国 | 麦芽・ホップ | 発芽させた大麦を粉砕し、50〜70℃の温水と共にかき混ぜ甘い麦汁を造り、煮沸後酵母を加え、5〜10℃の状態で10日程度発酵させ若ビールが造られる。この若ビールを0〜2℃で1〜3ヶ月熟成し、酵母カスなどを濾過して一般的なビールが造られる。 ラガービールとは本来こうした貯蔵ビールを指す言葉だが、日本では熱処理しない生ビールに対し、出荷時に加熱殺菌したビールをラガービールと呼んでいる。 |
ビール | ||||
日本酒 | 日本 | 米・こうじ | 蒸した米に米こうじと水を加えて発酵させ、これをしぼり、さらに濾過して造る。 | 清酒 | ||||
老酒 (ラオチュウ) |
中国 | もち米・こうじ | 製造方法は日本酒と同じ。原料にもち米と麦こうじを使い、香りづけの薬草を加える。長く熟成させることも多い。 | その他の雑酒 | ||||
蒸
留 酒 |
発酵によってできた酒を蒸留し、アルコール濃度を高めたお酒。 蒸留とは醸造酒を熱し、蒸発したアルコール分を冷却して液体に戻すこと。蒸留の回数が増えると、アルコール度数も高くなる。 |
ブランデー | フランスなど 世界各国 |
ぶどうなどの果物 | ■コニャック |
ブランデー | ||
ウイスキー | イギリスなど 世界各国 |
大麦・ライ麦・とうもろこしなど |
|
ウイスキー | ||||
ジン | イギリス オランダ |
ライ麦 とうもろこし |
原料を発酵させた後、ジュニパーベリーと柑橘系の果皮やスパイスを加えて蒸留したもの。 | スピリッツ | ||||
ウォッカ | ロシア・東欧 北欧 |
大麦・小麦 とうもろこしなど |
原料を発酵蒸留させてアルコール度が85度以上の強い酒を造り、水で薄めて活性炭で濾過したもの。 | スピリッツ | ||||
ラム | 西インド諸島など | サトウキビを搾った後の糖蜜 | 主に糖蜜を発酵して造る。熟成させるものとさせないものがあり国によってタイプが違う。 | スピリッツ | ||||
テキーラ | メキシコ | 竜舌蘭 | 竜舌蘭(ヒガンバナ科の根生植物)から造るメキシコ特産の蒸留酒。 アガベ・アスール・テキラーナという特産品種の直径70〜80cmになった基部(株)の部分を使う。蒸留は単式蒸留機で2回行われ、樽熟成しないホワイトテキーラはシャープな味わいが特長。 オーク樽で2ヶ月以上熟成したものはテキーラ・レボサドと呼ばれ、淡い黄色味と樽香がある。 |
スピリッツ | ||||
アクアヴィット | 北欧 | じゃがいも | じゃがいもを主原料とする北欧諸国特産の蒸留酒。 原料のじゃがいもは糖化酵素又は麦芽で糖化発酵され、連続蒸留機で蒸留する。これに水を加え度数調整し、キャラウェイ等の薬草・香草を加えてもう一度蒸留するとアクアヴィットになる。語源は蒸留酒を意味するラテン語のアクア・ビテ(生命の水)が変化したもの。 |
スピリッツ | ||||
焼酎 | 日本 | 米、麦、さつまいも、そばなど | 焼酎甲類は糖蜜や芋類、穀類などを原料に、発酵を行い連続式蒸留機で蒸留した酒。 焼酎乙類(本格焼酎)は、米を原料に黒こうじ菌か白こうじ菌、焼酎酵母を使い、清酒と同じ手順で第1次もろみを造る。これに穀類やイモ類を蒸して混ぜ、アルコール発酵させた第2次もろみを単式蒸留機で蒸留した酒。 |
焼酎甲類 焼酎乙類 |
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白酒 (パイチュウ) |
中国 | こうりゃん、ひえ、あわ等の雑穀 | こうりゃんなどの雑穀にこうじを加え発酵蒸留したもの。用いる雑穀やこうじの種類は様々。蒸留法も多種多様。 | その他の雑酒 | ||||
混成酒 | 醸造酒や蒸留酒に香りや味をつけた酒。 香りづけの材料を酒に浸す方法や、エッセンスだけを加える方法などがある。 |
混成ワイン | イタリアなど | ワイン+薬草など | ワインに香りをつけたもの。薬草などを加えて造るベルモットが有名。 | 甘味果実酒 | ||
リキュール | 世界各国 | 蒸留酒や醸造酒+香料など | 主に蒸留酒をベースに、果皮、薬草、種子などを加えた酒。甘いものが多く、カクテルに使うのが一般的。 | リキュール | ||||
葯酒 (ヤオチュウ) |
中国 | 白酒+薬草や動物 | 白酒に薬草や香りを加えた酒。マムシやハブ、トカゲなどを加えたものもある。 | その他の雑酒 |
ウィスキーは麦などの穀物を原料として糖化、発酵、蒸留させた後、樽に詰めて熟成させた酒をいう。
ウォッカ、ジン、ラム、焼酎などの蒸留酒はまとめて”スピリッツ”と呼ばれるが、ウィスキーもその一種。
こうした蒸留酒は中世の錬金術師が偶然作り上げたものと考えられている。
錬金術師たちは卑金属から”金”を作るために様々な試みをしていたようだが、たまたま彼らが使っていた道具、今でいう蒸留器のようなものに醸造酒を入れた結果、何とも言えない素晴らしい味の液体ができあがった。
錬金術師たちはその液体に不老不死の効果があると信じ、ラテン語で「アクアヴィテ(生命の水)」と呼んだ。
その後、この製法は、ヨーロッパ各地に広まり、アクアヴィテは各地の言葉に訳され蒸留酒をさすようになった。ウィスキーの場合はアクアヴィテがゲール語に訳された
「ウースカ・ベーハ(Uisge Beatha)」または「ウスケボー(Usquebaugh)」が語源となっている。
ウィスキーはいつから蒸留がはじめられたのかはっきりしていないが、発祥地はアイルランドと考えられており、同じゲール語を話していたスコットランドでもじきに蒸留がはじまったと考えられる。
ウィスキーはその後、アイルランド、スコットランドで独自の発展を遂げ、今日に至っている。
一方、アメリカでもやや遅れてウィスキー造りがはじまり、1919年に開始された禁酒法の影響でカナダのウィスキーも大発展を遂げた。
日本では20世紀に入ってからウィスキーが大々的に作られはじめ、現在ではスコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本のウィスキーは世界の五大ウィスキーと呼ばれるまでに発展した。
1. スコットランド(イギリスのブリテン島北部) ― ここでつくられるのが、スコッチウイスキー。
2. アイルランド(北アイルランド自治州とアイルランド共和国) ― どちらの領土でつくられるウイスキーも、アイリッシュウイスキーと称している。
3. アメリカ ― 原料、製法によりさまざまなタイプのウイスキーを生んでいるが、代表的なのがバーボン・ウイスキー。
4. カナダ ― カナディアンウイスキーとして、独自のタイプのウイスキーをつくっている。
5. 日本 ― スコッチ・タイプのウイスキーをつくっているが、デリケートな個性を確立した。
風味の点で強い個性をもっているのが、ピートの煙臭をもち、重厚な味わいで迫ってくるスコッチ・ウイスキーと、焦げ樽熟成により華やかな香りを呈するバーボン・ウイスキーの二つである。
アイリッシュ・ウイスキーは、マイルドだが、穀物の香味がよく溶けこんでいる感じが特徴。
日本のウイスキーは、昔はマイルドなタイプが主だったが近年では様々なタイプが生み出されている。
カナディアンウイスキーはこれらのなかでは、最もライトなタイプ。
アメリカの地で、蒸留酒がつくられるようになったのは、17世紀半ばからで、当初はもっぱら糖蜜が原料だった。その後、ヨーロッパから輸入したライ麦も使われるようになる。
アメリカ産の穀物による蒸留所は、1770年にピッツバーグに生まれたのが最初といわれる。
とうもろこし主体のウイスキーは、1789年ケンタッキーでエライジャ・クレイグ牧師がつくったのが最初だとされているが、1783年にエヴァン・ウイリアムズが試みたのが最初、とする説もある。
現在、アメリカのウイスキーは、連邦法の規制のもとでつくられている。それによると、ウイスキーとは、穀物を原料にし、アルコール分95度未満で蒸留した後、オーク樽で熟成(コーン・ウイスキーだけは熟成させなくてもよい)させたもの、およびそれにスピリッツをブレンドさせたものであり、40度以上で瓶詰めしたもの、となっている。
この範囲内で個性を打ち出したいウイスキーは、アルコール分80度未満で蒸留し、内側を焦がした新しいオーク樽で熟成させる。
その場合、原料にとうもろこしを51%以上含んでいればバーボン・ウイスキーとなり、ライ麦を51%以上含んでいればライ・ウイスキーとなる。ただし、とうもろこしを80%以上含み、樽熟成させないか、熟成させるにしても内側を焦がしていない新樽か、内側を焦がしたオークの古樽を使ったものは、コーン・ウイスキーとなる。
そして、こうしたウイスキーが二年以上熟成された場合、名称の上に「ストレート」という語が付く。また、法的にはバーボンに分類されるが、テネシー州でつくられ、同州産のサトウカエデの炭で濾過してから樽熟成させたものは、商習慣上、テネシー・ウイスキーとして区別されている。
このほか、ブレンデッド・ウイスキーが、アメリカ国内でかなり消費されている。これは、ストレート・バーボンやストレート・ライなどのストレート・ウイスキーを、20%以上ブレンド(アルコール分50度換算)したウイスキーのことで、残りの部分は、どんなウイスキーでもよく、ニュートラル・スピリッツでもよい。
ウイスキーのタイプ |
主原料 |
貯蔵樽 |
熟成年数 |
ストレート・バーボン・ウイスキー | コーン 51%以上 | 内側を焦がしたアメリカンホワイトオーク新樽 | 2年以上 |
ストレート・ライ・ウイスキー | ライ麦 51%以上 | 内側を焦がしたアメリカンホワイトオーク新樽 | 2年以上 |
ストレート・コーン・ウイスキー | コーン 80%以上 | 再使用アメリカンホワイトオーク樽または内側を焦がしていないアメリカンホワイトオーク新樽、またはステンレス樽 | 2年以上 |
ブレンデッド・ウイスキー | バーボン、ライ、コーン・ウイスキー20%以上にライト・ウイスキーまたはニュートラル・スピリッツをブレンドしたもの |
ボトルのラベルに書かれている"Kentucky Straight Bourbon"の文字。これは、米国のアルコール法で規定されているバーボンウィスキーの規定を満たしているとの証明でもある。 米国のアルコール法で"バーボン"は以下のように定義されている。
1. 使用するコーンの割合が51%以上である事
2. アルコール度数80度未満で蒸留する事
3. 内側を焦がしたオーク樽でアルコール度数
4. 62.5度以下で熟成させる事
5. 40度以上で瓶詰めする事
さらに、"ケンタッキー州でつくられたこと"、"最低2年間は熟成させること"といった条件を満たすことにより、"Kentucky Straight Bourbon"と名乗ることができる。
バーボンの主原料はコーン。上記の規定通り、穀物原料の51%以上の割合で使用する。
時々「コーンの使用率が80%以下」と記述されている事があるがこれは誤りで、コーンの使用率が80%を超えている場合、「コーンウイスキー」と名乗れるというだけであり、コーンの使用率が80%以上であっても上記の条件を満たしていれば、「Bourbon
Whiskey」と名乗る事ができる。
その他に、ライ麦、大麦(モルト)、小麦などを使用する。これらの使用比率を変える事により、各銘柄ごとの特徴が現れる。
具体的には、ライ麦の使用比率を増やせばスパイシーで重みのある味わいになり、コーンの使用比率を上げれば軽い味わいになる傾向がある。
また、小麦を使うとスムースでリッチな味わいになる傾向がある。
@マッシング(糖化) 上記の穀物を、ミルで細かく砕き、水(ライムストーンウォーター)を加えて加熱し、発酵に適した糖分を作り出す。この工程をマッシングという。 穀物はそれぞれ糖化する温度が異なり、最適な温度を維持しないと苦味などの雑味が発生してしまうため、厳密な温度管理が必要となる。 |
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A発酵 @の工程を経てできたものをマッシュ(糖化液)という。 このマッシュにイースト菌を加え、サワーマッシュ製法等の手法を用いて発酵させる。 サワーマッシュ製法とは、蒸留時に出た蒸留残液を、マッシュ全容量の25%以上をマッシュに加えて発酵させる製法のこと。 これにより発酵時にバクテリアが繁殖しすぎて酸が生成されるのを防止する。更に、バーボンがまろやかになる傾向がある。 また、イースト菌は各蒸溜所ごとに伝統のイーストを使用している場合が多く、このイーストの違いにより発酵の違いが生まれる。 通常、マッシュは20℃〜22℃の温度に維持され、3日間ほど発酵させる。 最終的に発酵の完了したマッシュをスチルビアという。 |
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B蒸留 通常、連続式蒸留器でアルコール度数60度前後まで蒸留され、ダブラーやコンデンサーといわれる装置で更に度数を上げる。この時、蒸留されるスピリッツのアルコール度数は80度以下。 |
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C熟成 バーボンの場合、何年間寝かせるかということが重要ではなく、熟成のピークを迎えた最高の状態で樽から出すことが重要になる。故に、熟成年数表示ができない場合が多い。
ただし、ほぼ8年を超えると「過熟成」の状態になり、樽の雑味が入りバーボンに渋みや薬臭さをあたえてしまう傾向がある。 熟成に使用する樽は、主に53ガロン(約200リットル)のものが使用されている。Brown Forman社(Early TimesおよびLabrot&Graham蒸溜所)以外の主な蒸溜所はすべてIndependent Stave社の樽を使用しており、内側を焦がす工程の違いでNo.1〜No.4の4種類がある。樽を焦がす工程にはトーストとチャーがある。
樽の材質には主に北米産のホワイトオークが使用されており、天日で乾燥させた物および乾燥室で人工的に乾燥させたものが使用される。この乾燥方法も蒸溜所がそれぞれオーダーしている。 樽詰めされたウイスキーは1年で約35%が蒸発して減少する。 これが「天使の分け前」と呼ばれている。 |
D加水・瓶詰め なお、加水せずに瓶詰めされるものもあり、バレル・プルーフなどと表記される。また、一樽毎に瓶詰めしたものをシングルバレル・バーボンという。 |
スコッチ・ウィスキーは世界の五大ウィスキーのひとつというだけでなくウィスキーを確立した元祖としての存在感があるウィスキーである。スコッチ・ウィスキーはスコットランドで作られるウィスキーの総称であり、次のように法律で厳しく規定されている。
<1988年制定スコッチウィスキー法>
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スコッチ・ウィスキーは性質の違いから3つのタイプに分けられる。モルト・ウィスキー、グレーン・ウィスキー、ブレンデッド・ウィスキーである。
グレーン・ウィスキーは主にとうもろこし、大麦麦芽を連続式蒸留機で蒸留後、樽熟成したウィスキーである。高いアルコール濃度で蒸留する結果、味わいはソフトでマイルドになる。その性質からサイレント・スピリッツとも呼ばれる。グレーン・ウィスキーが発展したきっかけは1725年に導入された麦芽税。この麦芽税に対し事業家はローランドに大規模な蒸留所を建て、麦芽の使用量を大幅に減らしたウィスキーを作りはじめた。さらに1780年からは釜容量税が導入され、税金はぐんぐん上昇。これに対しローランドの蒸留所は蒸留釜の深さを浅くし、蒸留回数を増やすことで採算を取ろうとした。ここから連続式蒸留機が発展。こうしてグレーン・ウィスキーは確立され、今も昔も大産地はローランドにある。
一方、小規模にウィスキーを作っていた人々は釜容量税導入前から小さい蒸留釜が認められなくなり、密造に走らざるを得なくなった。彼らは収税吏の目が届かないハイランドの山里に逃げ、ハイランドには無数の密造者(スマグラーという)が乱立していた。今日でもハイランド、ことにスペイサイドには多くの蒸留所があるが、そうした場所はたいてい密造酒のメッカだったところである。また、彼らは大麦麦芽を乾燥させる燃料として野山に無尽蔵にあったピートを利用した。これが幸いしてモルト・ウィスキーのさわやかな香味の元になり、モルト・ウィスキーも確立されていった。1824年、グレンリベット蒸留所のジョージ・スミスが政府公認を取ったことを皮切りに続々と政府公認を取る蒸留所が増え、密造酒の時代は終わりを告げた。その後、モルト・ウィスキーの蒸留所はすさまじい整理統合の歴史を経て、現在は100ほどが稼働している。
1860年代初頭、アンドリュー・アッシャーによって、モルト・ウィスキーとグレーン・ウィスキーのブレンドがはじめられた。これがブレンデッド・ウィスキーである。モルト・ウィスキーは個性にあふれ、得てして飲み難いと言われ、グレーン・ウィスキーはおとなしくおもしろ味に欠けると言われる。この両者の短所を打ち消し、長所を引き出したのがブレンデッド・ウィスキーである。ブレンデッド・ウィスキーの登場により、スコッチ・ウィスキーは世界へ大きく飛躍した。現在でもスコッチ・ウィスキー販売量の9割ほどはブレンデッド・ウィスキーであり、日本でも有名なバランタイン、ベル、シーバス・リーガル、カティサーク、J&B、ジョニー・ウォーカー、オールド・パー、ホワイトホースなどは皆ブレンデッド・ウィスキーである。
モルト・ウィスキーを製造する蒸留所はスコットランドに約100ほど存在する。これらは生産地の違いからハイランド、スペイサイド、ローランド、アイラの4地域に分類するのが一般的である。
さらに細かくハイランドからアイランズ(諸島)を分ける方法もあるが今回は諸島はハイランドに含んでいる。 また、ハイランドを東西南北に分ける場合もあるが、煩雑さを避けるためハイランドに一本化している。 さらに、ハイランド南西部のキャンベルタウンという街はかつて一大産地で独立した地域分類を与えられていたが現在残っている蒸留所はわずかに2つでハイランドに分類することが一般的である。 これら4地域の特性を簡単にまとめれば表のようになる。 |
<モルト・ウィスキーの地域性>
地域 |
特性 |
ハイランド Highland | ・力強く骨太なモルト・ウィスキー ・実に多士済々 |
スペイサイド Speyside | ・洗練された華やかなモルト・ウィスキー ・モルト・ウィスキーの現在の中心地 |
ローランド Lowland | ・ライトでおとなしいモルト・ウィスキー ・大資本の流入により衰退 |
アイレイ Islay | ・独特のヨード香とスモーキーさを持つ個性派 ・ヘビーなモルト・ウィスキー ・ブレンデッド・ウィスキーの核となるモルト・ウィスキー |
モルト・ウィスキーはシングル・モルトとヴァッテッド・モルトの2種類に分けられる。ヴァッテッド・モルトは複数の蒸留所のモルト・ウィスキーをヴァッティング(ミックス)したもの。ブレンデッド・ウィスキーとの違いはグレーン・ウィスキーを混入しない点。シングル・モルトは文字取り蒸留所単一のモルト・ウィスキー。他の蒸留所のモルト・ウィスキーを一切混ぜていないことが条件となる。
ジン生誕の地はオランダ。1660年にライデン大学医学部教授シルヴィウス博士がつくった薬酒がそもそもの始まり。ジュニパー・ベリー(杜松の実)をアルコールに浸漬、蒸留し、利尿、健胃、解熱剤として売り出した。
ジュニパー・ベリーのフランス語=ジュニエーヴルと名づけられたが、この薬酒がなかなか美味いので、薬用以外にも飲用しはじめた。
このオリジナルなジンの形を現代に伝えているのが、オランダのジュネヴァ(オランダ・ジン)。大麦麦芽、トウモロコシ、ライ麦などを糖化、発酵させ、単式蒸留器で蒸留する。穀物の香りのたつ、コクとほのかな甘みの酒になる。 初めて飲むと、ジンというよりはウイスキーの一種かと思うほど。後口にジュニパーの香りが少しする。 |
ジンは産業革命後のロンドンで飛躍的に進化した。19世紀半ばに連続式蒸留器が発明され、単式蒸留よりもずっと雑味の少ないクリアなジンが生まれることになる。これが現在飲まれているジンの主流派で、ロンドン・ジンとも言われるもの。爽やかな香気とシャープな切れが特徴だ。
原料はオランダ・ジンと同じだが、連続蒸留して95度以上のスピリッツをつくり、ジュニパー・ベリー、コリアンダー、キャラウェイ、アニス、オレンジやレモンの皮など植物成分を加え、もう一度単式蒸留し、香りを溶け込ませてつくる。
この香り付けに使うジュニパベリー、コリアンダー、シーズ、肉桂、セビル、ビター・オレンジ皮、アンジェリカ等のスパイスの配合と香りの付け方により製品の個性が出てくる。
種類としては一般的なドライ・ジン、少し甘みを加えアルコール度数40度に調整したオールド・トム・ジン(トム・コリンズに使う)、プリマス・ジン、オランダタイプのジュネバ、ジンの1種ではあるがドイツのシュタインヘーガー、その他にフルーツの香りなどをつけたリキュール・ジン(オレンジ・ジン、レモン・ジン)などがある。
現在数多くのカクテルの中でジン・ベースのものが 1番多く、カクテルには無くてはならないアイテムの一つである。
ウォッカはロシアからの外来語で、ロシア語風に言うと"ヴォットカ"。ではその語源はというと、"ヴァダー"(水)。
ロシア語には愛称形という変化形があり、日本語で言う"ちゃん付け"が人でもものでも何でもできる。"ヴォットカ"は"ヴァダー"の愛称形、"お水ちゃん"とかわいく呼んだ形なのだ。 しかも、この愛称形はロシア語の現在の愛称形ではなく、古い愛称形。この形で現在まで残っている愛称形はとても少なく、"パパ"(パープカ)"ママ"(マームカ)ぐらい。 つまり、"ウォッカ"はロシア人にとって"パパ"や"ママ"のように大切で懐かしく親しい、時代を超える"永遠"のシンボルといえるだろう。 |
<ウォッカの歴史>
14世紀末 イタリアのジェノア商人がウォッカをロシアに持ってくる。宮廷で飲まれたが、珍しいものという以外はなんの感動も与えず、宮廷にも民衆にも不評だった。
1448−1474年 国内でのウォッカ醸造の下地が作られた。この時期、これまでは無課税だった全てのアルコール飲料が公国による専売制になる。
1505年 ロシア製ウォッカがはじめて国外に輸出される。輸出先はスウェーデン、バルト海東岸。
1533年 モスクワではじめての"居酒屋"が開店する。居酒屋のメインメニューはウォッカ。皇帝(ツァーリ)の行政機関が管理、経営した。
1765年 エカチェリーナ2世が貴族に対しウォッカ醸造の制限を発表する。貴族のウォッカ醸造は無税としたが、その代わりに家柄、位によって醸造量を制限した。
1819年 アレクサンドル1世により、ウォッカ製造・販売が国家専売になる。値段は固定制にされ、ロシア国内どこでも7ルーブルで売られた。
1980年代後半 ゴルバチョフ書記長がウォッカ、その他アルコール飲料の販売規制をする。闇ルートで自家製ウォッカの悪質なものが出回り、病気になる人が続出した。ゴルバチョフ氏が国民に嫌われる一因となった。
12世紀ごろのウオッカは、蜂蜜を原料にしたものだったろうと推測されている。その後、18世紀ごろまではライ麦が主原料だったようだ。18世紀後半あたりから、大麦や小麦、アメリカ大陸からもたらされたとうもろこし、じゃがいもなども使われるようになった。1810年には、ウオッカを白樺の炭で濾過する方法が開発された。
現在のウオッカは、小麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物(北欧やロシアの一部の寒冷地では代替原料として、ジャガイモを使うことがある。)からアルコール濃度の高い(85度〜96度)グレーン・スピリッツをつくり、それを水で40度〜60度の間に薄めたうえ、白樺や椰子を焼いた活性炭で濾過する。こうすると、アルコールに溶けにくい成分が活性炭に付着して純度が高まり、色もクリスタル・クリアな状態になる。その結果、ウオッカは無色でライトな酒質のなかに、原料由来の微妙な香味をほんの少し残す、爽やかな酒として生まれてくるのである。
なお、ロシアやポーランドなどには、ウオッカ原酒にハーブやレモンなどさまざまな香味をつけたり、果実を浸漬したリキュール・タイプのものも数多い。
ラムの誕生に関して正確なことは伝わっていないが、17世紀に西インド諸島に蒸留技術を知るイギリス人が移住し、そこでサトウキビを使って作ったのが始まりと言われている。
ラムの語源はイギリス人のつくった酒を飲んだ原住民が興奮する様を表すrumbullion(興奮の意味で現在は死語)だという説と、イギリス海軍で水兵にラムを支給した提督に親愛をこめて付けられたold rummyというあだ名だという説がある。
<ラムの製法> ラムはサトウキビ(甘藷、Sugarcane)を原料とする蒸留酒である。 発酵の際には純粋培養酵母が使われ、その後アルコール度数95度未満で蒸留される(95度以上で蒸留するとニュートラル・スピリッツとなり、材料の個性のでないアルコールになってしまう。これらはしばしばジン・甲類の焼酎などの原料として使われる。)。この発酵・蒸留の仕方の違い、又その後の貯蔵の仕方の違いなどで色々なタイプのラムが造られる。
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<ラムの種類>
ラムを分類する時大きく分けて2通りの方法がある、一つは色で分ける方法でホワイト・ゴールド(アンバー)・ダークの3種類である、もう一つは風味で分ける方法でライト・ミディアム・ヘヴィの3種類があり色の分類にそれぞれ対応している。
現在はそれぞれの地域で色々な種類を造っているので一概には当てはまらないが、植民地時代統治していた国の影響が残っていて、旧イギリス領のジャマイカやイギリス領ガイアナで作られるヘビーラム、旧フランス領のハイチやフランス領マルティニック島でつくられるミディアムラム、旧スペイン領のプエルトリコやメキシコでつくられるライトラムがある。
ヘビーラムは糖蜜を複雑発酵させたものを単式蒸留器で蒸留し、樽熟成させたもの。色は褐色で、風味も濃いものに仕上がる。それに対してライトラムは絞り汁を発酵させたものを連続式蒸留器で蒸留してつくられ、香りはソフトでド口当たりはドライ。ミディアムラムは連続式蒸留器で蒸留したものを樽で熟成させたもので、色も風味もヘビーとライトの中間。
これらの違いは発酵・蒸留の仕方の違いにもよるが、貯蔵の仕方が大きく影響する。ステンレス・ホーロー等のタンクを使ったりすると色は付かず軽い風味のものとなり、樫の樽を使い内側を焦がしたりカラメルを塗ったり(カラメルを入れる物も有るかもしれない)すると色が付き風味も増す、熟成年数が増えると旨味が増す傾向がある。
メキシコ名産の蒸留酒。メキシコ特産のアガベ(Agave)という竜舌蘭の樹液を発酵・蒸留したものを総称してメスカル(mezcal)というが、メスカルの中でも特にアガベ・アスール・テキラーナという竜舌蘭を原料にして特定の産地(ハリスコ州・ミチョワカン州・ナジャリ州の一部)で製造されたものがテキーラである。語源は、メキシコの地名(ハリスコ州テキーラ村)から。 アガベ(竜舌蘭)の葉を取るとパイナップル型をした根茎(ピニャ)が現れる。このピニャ(pina)を根を分離して切り取り、半分に割って蒸し上げると糖化が起こり甘くなる。 次にこのピニャに水を加えながら絞っていくと甘い糖液が得られる。この糖液を酵母で発酵させてできた発酵醪(ハッコウモロミ)を蒸留器で1回または2回蒸留すると無色透明なテキーラ原酒が得られる。(アルコール度数は50度〜55度) 尚、テキーラと同様の製法だが、テキーラ指定産地に隣接する3州で作られるものをピノス(pinos)とも呼ぶ。又マゲイ(Maguey)と呼ばれる別種の竜舌蘭の樹液から作られるプルケ(Pulque)を蒸留したものもメスカルの1種であり、テキーラとは異なる。 |
<テキーラの原料>
原料にアガベ・アスール・テキラーナ(別名ブルー・アガベ) の樹液を100%使用する以外に、副原料として砂糖や廃糖蜜 を49%まで用いることも許されており、100%アガベの製品に対してミスト(Mixto)あるいはスタンダードと呼ばれるカテゴリーとなる。
この場合、副原料だけで作ったアルコールを後でブレンド することは認められていない。必ず発酵前にアガベ由来の糖液と副原料由来の糖液を混合した上で発酵しなければならない。
多くのテキーラ製品がミスト(スタンダード)であり、「100%アガベ」表示のないものは、これに属する。このミスト製品はまがい物のように見えるが、実際はテキーラ独特の香味(土臭さなど)が弱まり、飲みやすいタイプとなっている。
テキーラには「原料の違い」と「貯蔵の違い」によって次の7種類のタイプ(良し悪しではなくタイプの違い)に分けられる。製品になるとアルコール度数は38〜40度に調整されるが、樽出しなど製品によっては40度以上のものもある。
1)ブランコ(Blanco)
・原料に100%アガベを使用。
・メキシコ国外向けでは「シルバー」とも呼ぶ製品もある。
・蒸留直後、あるいはステンレス容器などで短期間熟成したテキーラを瓶詰したもので無色透明。
・もっともテキーラの香味を楽しめる。若々しさと勢いのある香味が魅力。
・カクテルベースとしても使いやすい。
2)ミスト・ブランコ(Mixto Blanco)
・1)のブランコと同様に未貯蔵だが100%アガベではない。
・原料に51%以上のアガベと砂糖などの副原料を使用。
・充分にテキーラの香味を楽しめるが、1)に比べ独特の香味は少し弱まっている。飲みやすいタイプ。
3)レポサード(Reposado)
・原料に100%アガベを使用。
・メキシコ国外向けでは「ゴールド」とも呼ぶ製品もある。
・木樽(ホワイトオーク)の中で2ヶ月以上1年未満貯蔵。
・テキーラはデリケートな香味を有す為、長く貯蔵しすぎると樽由来の木香(キガ)に負けてしまう為、 このカテゴリーが作られている。
・テキーラ独特の香味を残しつつ、貯蔵によって丸みが出てくる、丁度よい香味バランスが この1年未満の貯蔵期間である。(色は薄いアンバー:薄い琥珀色)
4)ミスト・レポサード(Mixto Reposado)
・3)のレポサードと同様の貯蔵方法・貯蔵期間。
・2)と同様に51%以上アガベと砂糖などの副原料を使用。
5)アニェホ(Anejo)
・原料に100%アガベを使用。
・メキシコ国外向けでは「ダーク」とも呼ぶ製品もある。
・木樽(ホワイトオーク)の中で1年以上貯蔵したもの ・テキーラ独特の香味は弱くなっているが、貯蔵による木の香味が充分に出ていて酒としての香味バランスは良い。
・色は濃いアンバー(琥珀色)で、貯蔵年数が長いもの程 濃い茶色になる。
・古いものほどテキーラらしさが少なく、万人受けする香味になっている。(古酒は貯蔵ラムやブランデーにも通ずる香味あり)
6)ミスト・アニェホ(Mixto Anejo)
・5)のアニェホと同様の貯蔵方法・貯蔵期間。
・2)4)と同様に51%以上アガベと砂糖などの副原料を使用。
7)ホーベン・アボカード(Joven Abocado)
・2)のミスト・ブランコにカラメル色素で着色したもの。
・貯蔵したように見せる工夫。
・日本ではほとんど入手及び口にすることはできない。
メキシコ名産の蒸留酒で、竜舌蘭の樹液を発酵・蒸留した酒の総称。テキーラ・ピノスも広義にはメスカルの1種。元々スペイン人が征服するまではメキシコには蒸留技術がなく、竜舌蘭の樹液を発酵したプルケ(pulque)と呼ばれる醸造酒が飲まれていた。
スペイン人が蒸留技術を持込み、プルケを蒸留したのがメスカルの起源であり、遠くテキーラの起源となる。その後、テキーラが有名になりその原料・製法を厳格に規制した後は、テキーラ以外の竜舌蘭を用いた蒸留酒を一般的
にメスカルと呼んで売られている。
マゲイ(Maguey)と呼ばれる竜舌蘭の樹液からできる醸造酒。テキーラ用のアガベとは異なり、地面に生えているマゲイを葉がついたままで中央部(樹芯部)を半球型(ボール型)に少し刳り
ぬくと、その中にアグア・ミエール(Aguamiel:蜜の水)と呼ばれ る樹液が溜まってくる。この樹液はすでに甘く、これを採取し木桶や皮袋の中で2〜3日放置しておくと自然発酵によりアルコール度数3〜7度の濁り酒(醸造酒)ができる。一般的に微発泡で口当たりに爽快感がある。
飲み方は、そのままビールのように飲んだり、オレンジジュースなどの果汁で割って飲んだりする。プルケリア(Pulquelia)と呼ばれるプルケ酒場は、低所得層向けが多く、中には水で薄めて儲けを企むような柄の悪い店もあるので要注意。(事実プルケリアの数は減っている)
ヒガンバナ科のアガベ属の総称。主にアメリカ合衆国とメキシコの乾燥地原産で約300種あり、観賞用に栽培されるアガベ属のうちの一種で多年草。メキシコ原産で、江戸時代に渡来し観賞用に栽培され、葉は根生し狭披針形で厚く、長さ1〜2メートル、ふちは黄白色でかたいとげを列生。 夏、花茎を高くのばし、淡黄色の筒状花を円錐状につける。花はごくまれに咲き、一度結実すると株は枯れる。葉の繊維で織物をつくったり、葉のしぼり汁で”テキーラ”を醸造する。